こんにちは、カリタです!
労務費計算は2016年以降の簿記1級で、
- 工業簿記第153回 資料(3)
- 工業簿記第156回 第3問
に出題されています。
商工会議所のホームページで公表されている労務費計算の試験範囲は下記の通りです。
- 労務費の分類
- 賃金関係の証ひょうおよび帳簿
- 作業時間および作業量の計算
- 消費賃金の計算(予定賃率による計算を含む)
- 支払賃金、給料の計算
一見すると試験範囲が広い様に思いますが、
簿記1級の試験範囲は簿記2級の試験範囲も含む
ため、簿記1級では主に
- 労務費の分類
- 労務費の計算
- 未払給与・前払給与の調整
- 源泉所得税・社会保険料
- 賃率差異の算定・処理
理解しているかがポイントになります。
それぞれおさえておきましょう。
労務費の分類
労務費とは、
労務用役の消費によって生ずる原価
です。例えば、
- 賃金(基本給のほか割増賃金を含む。)
- 給料
- 雑給
- 従業員賞与手当
- 退職給与引当金繰入額
- 福利費(健康保険料負担金等)
等です。
製造原価のうち、
労務用役の消費によって生ずる原価
が労務費に集計されるため、
例え、工場・製造関係者に関する
- 訓練費
- 採用コスト
等であっても労務費に含まれないと言うことです。
なお、例えば、
- 本社従業員(製造以外)
- 役員
に対する給料等は、
そもそも製造原価ではない
ため、労務費には含めません。
労務費の計算
労務費の計算の基本は、
実際作業時間(又は作業量)×賃率=労務費
です。そして、
賃率には、
- 実際の個別賃率
- 実際の平均賃率
- 予定平均賃率(例外)
を使用します。
未払給与・前払給与の調整
月給労働者の給与は、
- 遅刻
- 早退
- 残業
等により支給額は変動する
ため、月給がいくらかを計算してから支払う必要があり、
基本的に給与締め日に給与を支払うことはできません。
そのため例えば、20日締め25日払いの様に、
締め日あとに支給日
を各社設けています。
一方で、原価計算は月(又は四半期、年)単位で行われますので、
- 締め日・支給日
- 原価計算期間
の調整が必要となります。
具体例として、20日締め25日払いの給与の場合、
1月25日に支給される給与には、
12月21日から12月末までの給与が含まれています。
そして、1月21から1月末までの給与は、
2月1日から20日分と合わせて2月25日に支給されます。
そのため、下記の調整が必要となります。
当月給与支給総額-前月未払額+当月未払額=当月実際労務費
問題文に当月未払額が金額として記載されていない場合には、
出勤票などの資料を読んで当月未払額を計算する必要
があります。
なお、問題文の指示にもよりますが、
当月未払額は時間×平均支払賃率で算出
します。
翌月の実際賃率がまだ確定していない
ためです。
源泉所得税・社会保険料
簿記1級の問題文に、給与支給総額と控除額として
- 源泉所得税
- 社会保険料
が記載されていることがあります。
この場合、会社の労務費として使用するのは、
給与支給総額の金額のみ
です。
そもそも所得税や個人負担社会保険料は、
個人が負担するもの
ですが、各人が各人のタイミングで支払ってしまうと国の事務が混乱してしまいます。
そのため、給与から天引きする形で、
会社が従業員の代わりに資金を預かって国に納めています。
会社は預かったお金を貰えるわけではないため、
結局給与額面分の資金を負担する
ことになるため全額労務費として計算する必要があると言うことです。
賃率差異の算定・処理
上述の通り労務費の計算は、
実際の作業時間に実際の賃率を乗じることで労務費を計算する
されていますが、実際には、
- 一ヵ月の日数
- 祝日・有休
- 遅刻・早退
は毎月異なるため、
作業時間は毎月変動
します。
賃率は、
賃率=労務費÷作業時間
により計算されるため、
賃率も毎月変動する
ことになります。
そのため、年間を通して賃率を平準化したいのであれば、
予定賃率を使用する
ことで平準化することができるようになります。
しかし、予定賃率はあくまで「仮」の賃率であるのため、
最終的には真実の数字である実際労務費へと調整する必要
があります。
なお、予定価格を使用する場合にも、
実際作業時間(又は作業量)
を使用する必要があることには注意が必要です。
賃率差異の計算
賃率差異とは、
労務費を予定賃率をもって計算することによって生ずる原価差異
のことです。そして、
一期間におけるその労務費額と実際発生額との差額として算定
します。
つまり、賃率差異は、
- 労務費予定配賦額=実際作業時間×予定賃率
- 当月の実際労務費額
の差額として計算されます。
有利差異・不利差異についてはこちらの記事をご参照ください。
賃率差異の処理
賃率差異は、
売上原価として処理
します。
原価差異を把握後、
製品別計算の再計算を行うことは大変
なため、再計算を行わず売上原価として処理することを認めています。
一方で、予定賃率の設定が不適当で比較的多額の原価差異が生ずる場合には、
予定賃率による計算に依拠できない
ため、賃率差異の全額を売上原価として処理することが出来ず、
- 売上原価
- 棚卸資産
への配賦が必要となります。
最後に
労務費は、工業簿記の基本として、
- 理論問題
- 計算問題
ともに出題されます。
是非、過去問で練習してみてください。
一度で解けなくても問題ありません。
工業簿記の基本になりますので、何度も解いて必ずマスターしてください。