この記事で解決できるお悩み
- 経営管理・経営分析って何
- 経営管理・経営分析のイメージができない
- 経営管理・経営分析って役に立つの?
「経営管理・経営分析で何をやっているのか具体的なイメージができない」というお悩みはないでしょうか?
今回は上記のようなお悩みを解決できる記事を書きました。
前回記事でたこ焼き一個当たりの材料費を25円と試算しましたので、この25円を使って、たこ焼き屋さんの経営を考えてみましょう。
前回記事:【簿記1級】工業簿記・原価計算のイメージをつかもう!
たこ焼き屋さんに係る費用を考えてみよう
8個入りたこ焼き1パックを販売するためにかかる費用
- 材料費 1個25円×8個=200円
- 容器・箸・袋等 12円
初期投資(耐用年数4年と仮定)
- キッチンカー 200万円
- 厨房設備キッチンカーの装飾・改造 100万円
- 調理器具一式・看板 12万円
その他毎月かかる費用
- ガソリン代 月2万円
- 駐車場代 月2万円
- 月あたり車検代と月あたり保険料 1万円
上記を整理してみると
- 1パック販売するために係る費用は212円(=200円+12円)
- 1か月当たりかかる費用は11.5万円(=(200万円+100万円+12万円)÷4年÷12カ月+2万円+2万円+1万円)
となります。
簿記1級では、上記の
- 1パック販売するためにかかる費用のことを変動費
- 1か月あたりかかる費用のことを固定費
と言います。
何を変動費・固定費とするかは、分析する対象や期間によって変えていく必要があります。
例えば、時給1,200円でたこ焼きの作り手を雇用した場合を考えてみましょう。
時給は1時間あたりの固定費とも考えることができます。作った量に応じて給料が決まるのではなく、働いた時間に応じて給料が決まるためです。
一方で、たこ焼きの作り手は、たこ焼きを作る量が増えるたびに増員する必要があります。
そのため、たこ焼きの1個あたりの変動費として性格も持っているとも言えます。
赤字にならないかを考えてみよう
- たこ焼き8個入り1パックの販売価格を500円
- 月間の営業日数を25日
と仮定すると1営業日あたり何パックを販売すると赤字にならないか考えてみましょう。
- 1パックの販売価格を500円
- 1パック販売するために係る費用は212円
上記から1パックを販売すると288円(=500円-212円)の利益が出ることがわかります。
1か月あたりかかる費用は11.5万円であることから、1営業日あたりにかかる費用は115,000円÷25日=4,600円となります。
1営業日あたりにかかる費用4,600円÷1パックあたりの利益288円=約15.97パック
つまり、一日あたり16パック販売できれば赤字にならないといえます。
簿記1級では、赤字のでない点を損益分岐点と言います。
起業できるかを考えてみよう
仮に、たこ焼き屋で起業せず、サラリーマンを続けていたら月30万円稼げるとします。
では、下記の前提を使って、
- 1パックあたりの利益288円
- 1営業日あたりにかかる費用は4,600円
30万円の稼ぐためには一日あたり何パック販売する必要があるのか考えてみましょう。
30万円稼ぐためには、一日あたり12,000円(=300,000円÷25営業日)稼ぐ必要があります。
(1営業日あたりにかかる費用4,600円+目標利益12,000円)÷1パックあたりの利益288円=約57.64パック
つまり、一日あたり58パック販売できれば起業した方が得と言うことです。
簿記1級では、1パックあたりの利益と販売量、固定費から分析することをCVP分析と言います。
また、サラリーマンを続けるか起業かなどの、どちらかを選ぶ場合どちらかを選べない案のことを相互排他的投資案と言います。
反対に、サラリーマンを続けながら副業としてたこ焼き屋さんを始めるのであれば、サラリーマンを続けるか起業かの二者択一とはなりません。
サラリーマンとしての給料はたこ焼き屋さんを副業として初めても得ることが出来るため、機会損失とはならないためです。
この場合には、たこ焼き屋さんとして始める初期投資額を回収できるかを考えていけば良いと言うことです。
この場合に簿記1級で使う方法は、正味現在価値法という方法です。
資金は、銀行の利息、株・NISAなどの投資に使うことができます。
つまり、初期投資額分を投資した場合に得られる利益も、たこ焼き屋さんを副業として始めた場合に回収できるかも考慮する必要があるということです。
販売価格を考えてみよう
次に、仮に一日あたり50パックまでしか作れない場合には、どうしたら起業できるかを考えてみましょう。
利益を出すためには、下記の3つの方法が考えられます。
- 販売価格をあげる
- 1パックあたりの費用をさげる
- 固定費をさげる
では、下記の前提を使って、
- 1営業日あたりの販売パック数50パック
- 1パック販売するために係る費用は212円
- 1営業日あたりにかかる費用は4,600円
- 1営業日あたりの目標利益12,000円
販売価格をあげる方法で考えてみます。
1営業日あたりの販売できるパック数が決まっているため、先ずは、50パックを販売した時の費用と目標利益を出してみましょう。
1パック販売するために係る費用212円×50パック+固定費4,600円+目標利益12,000円=目標売上高27,200
次に、目標売上高を1日あたり販売パック数で割って、販売価格を計算してみましょう。
目標売上高27,200÷50パック=544円
つまり、1パックあたり544円で販売できれば一日あたり50パックの販売数でも起業できるといえます。
簿記1級では、このような市場市価から販売価格を決めるのではなく実際にかかるコスト・目標利益から販売価格を決める方式を、コスト・ベースの価格決定方式と言います。
費用と売価の比率をマークアップ率と言います。上記の場合、
(1パック販売するために係る費用212円×50パック+固定費4,600円)÷販売パック数50パック=1パックあたり費用304円となることから、
販売価格544円÷1パックあたりの費用304円=約1.79、つまりマークアップ率は78%(=178%-100%)となります。
最後に
簿記1級で出題される経営管理・経営分析をテストだけで使うものとして考えてしまうと、途端に難しくなってしまいます。
普段から、身近なものの経営管理・経営分析を少し考えてみて、その後、勉強を進め知識とリンクさせていくと、イメージをつかみやすくなります。
工業簿記・原価計算は、テキストよりも問題文の指示を的確に読めるか否かで合否が決まります。
イメージをつかむことが出来ればグッと合格に近づくと思います。