こんにちは、カリタです!
前回に引き続き標準原価計算について解説していきます。
この記事は、
- 標準原価計算の方法と記帳
- シングル・プラン
- パーシャル・プラン
- 修正パーシャル・プラン
について解説します。
標準原価計算の方法と記帳
標準原価計算の勘定記入方法には、
- シングル・プラン
- パーシャル・プラン
- 修正パーシャル・プラン
があります。
勘定記入の方法とは、
標準原価と原価の実際発生額を各勘定科目にどのように記入していくのか
というものです。つまり、
どのように原価計算を行うのかということではない
ため、どの勘定記入方法を使っても
- 完成品原価
- 期末仕掛品原価
- 原価差異
の金額は同じ金額になります。
なぜ勘定記入方法が複数あるのか
私自身が学生の頃、なぜ複数の勘定記入方法があるのかわかりませんでした。
それは、簿記1級や会計士試験では問題文の指示に従い原価差異を計算しますが、
実務的には原価差異は計算して出すものではなく勘定記入の結果として残るもの
と言うことを知らなかったからです。
つまり、実務的には、
- 価格差異
- 数量差異
といった差異の計算式が先にあるわけではなく、
標準額と原価の実際発生額を記帳した結果を差異として取り扱う
と言うことです。
つまり、どのように勘定記入を行うかは、
どのように原価差異を把握するのか
と言うことでもあります。
それでは、個々の記帳方法を見ていきましょう。
シングル・プラン
シングル・プランとは、
仕掛品勘定のすべてを標準原価で記入する方法
です。
言葉の通り、仕掛品勘定の記帳方法が
標準原価のみ(シングル:単一)
ということです。
仕掛品勘定の全てとは、
- 当月投入
- 完成品
- 期末仕掛品
のことです。なお、
期首仕掛品とは前期末仕掛品であるため、
前期末の時点で既に記帳済み
です。
そして、仕掛品勘定全てを標準原価で記入するために
- 直接材料費(正常仕損費・減損費含む)
- 直接労務費
- 製造間接費
等の消費も標準原価で記入されることになります。
例えば、下記の条件の場合には、
完成品数量500個
1製品あたりの原価標準2,200円
- 直接材料費1,000円
- 直接労務費500円
- 製造間接費700円
原価の実際発生額は下記の通りであった。
- 直接材料費550,000円
- 直接労務費200,000円
- 製造間接費300,000円
先ず、500個の完成の標準原価の記入が行われます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
製品 | 1,100,000 | 仕掛品 | 1,100,000 |
次に、完成品500個を作るための標準原価の記入が行われます。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
仕掛品 | 1,100,000 | 直接材料費 | 500,000 |
直接労務費 | 250,000 | ||
製造間接費 | 350,000 |
最後に、原価の実際発生額を記入します。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
---|---|---|---|
直接材料費 | 550,000 | 現金預金 | 1,050,000 |
直接労務費 | 200,000 | (又は買掛金等) | |
製造間接費 | 300,000 |
上記までの勘定記入が行われた結果、下記の残高が残ることになります。
- 直接材料費勘定:借方50,000
- 直接労務費勘定:貸方50,000
- 製造間接費勘定:貸方50,000
これが原価差異です。そして、
これら原価差異は下記の様に呼ばれます。
・標準額<実際額の場合
借方に残高が残るため借方(不利)差異
・標準額>実際額の場合
貸方に残高が残るため貸方(有利)差異
シングル・プランでは、仕掛品勘定全てを標準原価で記入するため、
標準原価と原価の実際発生額との差額である原価差異
は仕掛品勘定ではなく、
- 直接材料費
- 直接労務費
- 製造間接費
等の各勘定内で生じることになります。
- 直接材料費
- 直接労務費
- 製造間接費
等の各勘定科目内で原価差異が生じるため、
原価差異を費目単位で把握することが出来ます。
そして、原価差異を分析する際には、
費目単位で価格・消費量にわけて分析していく
ことになります。
パーシャル・プラン
パーシャル・プランとは、
仕掛品勘定の当月投入以外を標準原価で記入する方法
です。
パーシャルとは英語で部分的という意味です。
つまり、仕掛品勘定の記帳方法として
部分的(パーシャル)に標準原価を使う
ということです。
パーシャル・プランでは、
- 期末仕掛品
- 完成品
は標準原価で記入されますが、
当月投入は実際原価で記帳されるため
- 直接材料費
- 直接労務費
- 製造間接費
等については原価の実際発生額で記帳される
ことになります。
そのため、標準原価と原価の実際発生額との差額である原価差異は、
すべて仕掛品勘定で生じる
ことになります。
そして、原価差異を分析する際には、仕掛品勘定内で、
- 直接材料費
- 直接労務費
- 製造間接費
等の費目単位にわけ、その後さらに
- 価格
- 消費量
にわけて分析していくことになります。
そのため、原価差異の分析を考えると原価差異を
- 直接材料費
- 直接労務費
- 製造間接費
等の費目単位で把握できるシングル・プランの方が分析が簡単そうです。
しかしそもそも原価差異の分析は任意
であるため、差異分析をしない(できない)会社であれば、
原価差異を一括して把握できるパーシャル・プラン
の方が実務的とも思えます。
修正パーシャル・プラン
修正パーシャル・プランとは、
仕掛品勘定の当月投入以外を標準原価、
当月投入を「標準価格×実際消費量」で記入する方法
です。
標準原価とは標準価格×標準消費量ですが、
当月投入に標準価格×実際消費量を使うことで、
- 直接材料費
- 直接労務費
- 製造間接費
等の費目単位で、
標準価格と実際価格による原価差異
仕掛品勘定で、
標準消費量と実際消費量による原価差異すべて
を把握する方法です。
そして、原価差異を分析する際には、
価格差異に関する際は既に各費目ごとに把握できているため
仕掛品勘定内で生じた消費量に関する原価差異を
- 直接材料費
- 直接労務費
- 製造間接費
等の費目単位にわけていきます。
パーシャル・プランを修正したとも言えますが、シングル・プランを修正したとも言え、
どちらかというと折衷案の様な方法
です。
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